「まんがるゥのこれも学習マンガだ!Navi」vol.13更新「ベルサイユのばら」(立川まんがぱーく) | 織田博子(オダヒロコ)ポートフォリオ oda Hiroko portfolios

「まんがるゥのこれも学習マンガだ!Navi」vol.13更新「ベルサイユのばら」(立川まんがぱーく)

名作中の名作で、発表から半世紀が経っても色褪せない、マンガの金字塔です。私も大好きな作品ですが、この連載のために再読しました。

登場人物一人一人の喜びや葛藤が描かれ、彼らに寄り添ううちに抗いがたい歴史の波に飲み込まれていきます。全9巻と中編でありながら無駄のないプロット、丁寧な人物の描写がさすがです。

特に架空のキャラクター、男装の麗人オスカルは魅力的に描かれています。実在のマリー•アントワネットのキャラを引き立てながら、なおかつ魅力を放つキャラとなっています。

余談ですがビョルン•アンドレセンの映画「世界で一番美しい少年」(2021)の中で池田理代子先生が「こんなに美しい人がいるのか」と衝撃を受け、オスカルのモデルとしたという話がありました。その美しさは、映画「ヴェニスに死す」をぜひご覧いただきたいです。

再読してみると、ドラマチックなフランス革命の前が丁寧に描かれていて、「悪の貴族を、正義の民衆が倒した!」という単純な図式で描かれてないことに気付かされます。ここでも、オスカルが貴族でありながら民衆の側に立とうとし、架け橋となっています。

ここからはミーハーな感想ですが、フランス革命の前の貴族のゴタゴタ期が長いので、それにチャチャを入れるオスカルとアンドレがいいですね。気軽な感じ。「チェーザレ 破壊の創造者」や「ブッダ」でも、史実を扱う作品はそのままではつまらなくなりがちな中、オリジナルな人間らしいエピソードをはさむことでマンガの魅力を作っています。

今回読んで気づいたことは、オスカルとアントワネットは対になっているということ。皇女として最後まで支配者側として死んだアントワネットと、貴族でありながら民衆の側に立ったオスカル。

オスカルは人前では絶対に泣かなかった。「軍人たるもの、人前では感情を出してはならない」。しかし、女性としての自分を受け入れた後、あるシーンで人の前で涙します。このシーンはグッときます。

一方で人前では泣きまくりだったアントワネットは、民衆が敵となった時に初めて「子どもたちを守るために戦う」「涙は見せない」と決意する。アントワネットは戦うオスカルの背中から学び、オスカルはアントワネットに自分にはなかった生き方を学ぶ。

名作は、読むたびに新しい発見があるものですね。人の親になって読むと、アントワネットの決意、成長に感銘を受けました。

まんがるゥのこれも学習マンガだ! NAVI

「学習目的」で制作されたわけではないけれど、読んでいくと自然に知識が身につくマンガを紹介していきます。

vol.12 「バンド・デシネ 異邦人」(ジャック・フェランデス)

vol.11 「昭和元禄落語心中」(雲田はるこ)

vol.10 「ナニワ金融道」(青木雄二)

vol.9 「ツレがうつになりまして。」(細川貂々)

vol.8 「凍りの掌」(おざわゆき)

vol.7 「ブッダ」(手塚治虫)

vol.6 「サトコとナダ」(ユペチカ)

vol.5 「ミノタウロスの皿」(藤子・F・不二雄)

vol.4 「岳」(石塚真一)

vol.3 「チェーザレ 破壊の創造者」(惣領冬実)

vol.2 「寄生獣」(岩明均)

vol.1 「ヴィンランド・サガ」(雪村誠)