ミャンマー出身の友人がいる、私にとってミャンマーの母親のような存在の人。彼女の誕生日は2月1日。コロナ真っ最中の2021年の彼女の誕生日に、ミャンマーの軍事クーデターが発生した。彼女の誕生日は、悲しい日になってしまった。
そして彼女は悲しみを抱えたまま、病で2022年にこの世を去った。祖国に帰ることのないまま。
ミャンマーの軍部が「2020年11月の総選挙で不正があった」と主張しクーデターを起こし、独裁政権となった。人々は命をかけて「民主主義を守れ」と訴えている。
この本はフランス人のジャーナリスト、フレデリック•ドゥボミの原作と、香港のラウ•クォンシンのマンガで描かれている。当事者ではない人たち(ラウ•クォンシンはミャンマーを訪れたこともない)によって描かれたこの本は、だからこそミャンマーの現実をえぐりだしている。民主主義の危機として、自分達の問題として読者につきつけてくる。
軍事クーデターとそれに対抗する勇気あるミャンマーの人々は報道で知っていたけど、この本ではさらにミャンマーの問題をえぐり出す。多民族国家であるミャンマーにおいて、軍が少数民族を弾圧していたこと。また多くのビルマ族はそれを無視してきた、さらには少数民族を罵っていた(「嘘つき」と誹謗中傷し、デモを行っていた)こと。
少数民族のうけていた仕打ちを今はビルマ族も体験している。
ここを読んでいる時、ずっと辛かった。こう言われているようだった。「民主主義の根幹を否定したミャンマー軍を許してはいけない。ミャンマーを無視しているお前の場所も、すぐにミャンマーのようになる。ミャンマーを守れ、民主主義を守れ」
日本は安定しているから、平和だから、大丈夫。でも、ミャンマーも2010年台に著しい経済発展をし、日系企業が参画し、公園ではイベントが開かれ人々が自由に過ごし、ショッピングモールや高層マンションが建った。民主的な選挙ののちに、クーデターが起きた。
自由とは空気のようなもの。当たり前のように自由を生きていると、自由の価値をつい忘れてしまう。(作画 ラウ•クォンシン)
ミャンマーの仏教徒の中では輪廻転生が信じられていて、在ミャンマーの方によると、魂が体を離れるとすぐに他の人間として生まれるのだそうだ。
その方に「私のミャンマーの友達は、帰りたがっていたミャンマーに生まれているでしょうか」とメールに書いたら、返信で「今のミャンマーは生きていくだけで大変なので、日本で幸せに暮らしてほしいです」と書かれていた。