100年先も読まれるであろうマンガってありますよね。
その作者と同じ時間を生きているという事におののきつつ、伝説が生まれ続けているのを体験できる作品。
チェーザレは私にとってそんな作品です。
この作品を読むまでチェーザレ・ボルジアについて全く知らなかったんだけど、
「カトリックの教皇の私生児」「スペイン人でありながらイタリア統一をめざす」「めっちゃイケメン」みたいなエピソードを読み心惹かれました。設定が多すぎる。
破天荒なエピソードとイタリア統一を目指したことから、「イタリアの織田信長」とも。志半ばにして死ぬところも似てますね。
余談ですが、私の旧姓は織田で、家紋も同じ織田木瓜ですが血縁関係はないらしい。
父がルーツを調べた際、「奈良もしくは岐阜に『織田村』という場所があり、そこの出身の人は織田姓で皆木瓜紋」。『織田まつり』という、全国の織田さんが集まる祭りが何年かに一度開催されていたが、織田村の消滅に伴い無くなった」という話がありました。
第一話を読んで、絵の美しさと静謐な雰囲気に圧倒され、次の日に本屋に行って1巻から11巻まで一気に買った。
特に震えたのは2巻のカラーページ。
バチカン宮殿の「システィーナ礼拝堂」はミケランジェロによる天井画が有名だけど、この2巻の年代ではまだ描かれていなかったとのことで、邦訳されていない文献をもとに当時の天井画を再現したとのこと。
「マンガってそんなことできるんだ」って戦慄した。
どこかのインタビューで読んだ記憶があるのだけど、どうしても見つからない。細部までこだわる惣領先生は、「窓の下の方の装飾がわからない」という理由でイタリアに飛んだというエピソードもお持ちだそうで、このマンガ自体が研究の賜物であり、後世に伝わっていく資料とも言えそう。
好きなキャラクター
初期の話の中心となるのは、チェーザレではなく、架空のキャラクター・アンジェロ。いろいろ渦巻くサピエンツァ大学およびピサのややこしい人間関係を、空気の読めないアンジェロが引っ掻き回しつつ観察していく。
しょっぱなから後ろ盾となるメディチ家のボンボン・ジョヴァンニ(最初のほうめっちゃ嫌なやつですね)の面目を叩き潰してしまう。
学内で対抗する派閥のスペイン団のトップ・チェーザレと仲良くなって、なんだかんだありつつも両方の橋渡し役になる癒し系キャラです。好き。
で、私のすっごい好きなキャラクターはチェーザレのボディーガード・ミゲル(ミケロット)。
孤児でユダヤ人で、チェーザレの腹心として育てられたミゲル。チェーザレのことを尊敬し、命を捧げる事をいとわないけど、チェーザレに対しては結構フランクに接してて適当なことを言ったりしている。
手元に単行本がないのでうろ覚えなんだけど、「チェーザレのために神は俺を誕生させた」と言い切っちゃうシーンがすごく好き。
20そこそこの青年にこの言葉を吐かせて、そしてそれが説得力ありまくり。
言葉少ななミゲルが、行動で示してきたことが端的にあらわされている印象的なシーンです。
マンガ「ポーの一族」のアランとエドガーとか、ゲーム「ロマンシングサガ」のダウドとジャミルとか、「精神的双子」みたいな設定にめちゃくちゃ弱いので、この二人の関係はグッときます。
楽しい学園シーン
ピサの権力闘争とか学内の派閥とか教皇選とか、めっちゃくちゃややこしい人間関係と政治的思惑が交差する作品ですが、
1巻に1,2話くらい学生たちがただバカやってるだけのお話が入り、いいテンポを生み出しています。
嫌なやつだったボンボン・ジョヴァンニが太ってくと同時になんか人間的にも丸くなっていったり
めちゃくちゃ頭が良くて人の行動の裏の裏を読むようなチェーザレが、裏も何もないアンジェロに癒されたり
彫像を破壊してみんなで怒られたり…
シリアスな話が続くとやっぱり疲れるので、こういうバカバカしい、でもチェーザレ達も普通の男の子なんだよな~と感じさせるお話はやはり楽しいし、印象に残りますね。
作品について
チェーザレ 破壊の創造者第1巻の内容紹介: 「私の母は娼婦――そして父は怪物だ」15世紀のイタリア、ルネッサンス時代。現代政治学の祖・マキァヴェッリに「理想の君主」とまで謳われながら、歴史の闇に葬られた英雄チェザーレ・ボルジア。争いに向かおうとする不穏な時代に、全ヨーロッパ統一という野望を抱いた男の戦いの物語。本邦未訳『サチェルドーテ版チェーザレ・ボルジア伝』(イタリア語原書)を精査し惣領冬実が描く、華麗なるルネッサンス絵巻!
Amazonより引用