2023年10月19日、BUCK-TICKのボーカル、櫻井敦司さんがZepp Yokohamaでのライブ中に体調不良となり、同日脳幹出血のためご逝去されました。謹んでご冥福をお祈りします。
イラストの背景
今回櫻井敦司さんの訃報に接し、私が最も聞いたのは「愛のハレム」でした。
櫻井さんの歌詞は「愛と死」がテーマとなることが多く、どの曲を聞いても、彼の生前とは違うように聞こえてしまいます。「もう しばらく会えないんだ おやすみだけを この電話最後に じゃあね」(『Long distance call』)とか、亡くなったお母さんとの電話を描いたものなんだけど(確か)、あっちゃんが遠くに行ってしまうのが感じられて切なくなってしまって。
「鬱曲は聞かない方がいいよ」と、友達が言ってくれたんだけど、私の好きな曲はすべて鬱曲なんですよね…
「愛のハレム」は2023年発売のアルバム「異空ーIZORAー」に収録の曲。「カサブランカ」「マラケシュ」など、モロッコの地名が出てきます。BUCK-TICKの曲の中ではたびたびイスラム風の曲調やモチーフが出てきます。
あっちゃんの生前ももちろん聞いていて、7月のライブで聞くことができたときは夢見心地でした。
マラケシュの路地に迷い込んだような曲
あっちゃんの訃報に接した後は、ずっと「この世は夢ね 愛のハレム」という歌詞が頭の中から離れず、歌詞を読みこみながら聞いてみました。
マラケシュの路地(2010年撮影)
「この世は夢ね お前はそうさ 夢や幻 鏡よ鏡 老婆が笑う あたしもそうさ 夢や幻」と、マラケシュの迷路のような路地の中にある鏡に映る老婆のセリフ。
絵の中では、この老婆に見立ててあっちゃんを描いてみました。
タナトスの花が黒いユリなのは、カサブランカ(百合の花の名前)からの連想かと思います。
マラケシュの路地の中にある鏡…幻想的で、まるでこの世のものでないようなものの中にいるあっちゃん。
「迷い込んだcorridor(小道) わたし ただ étranger (迷い込んだ人、外国人)」とちりばめられるフランス語(モロッコはフランスの植民地だったため、フランス語が広く使われている)や
「カサブランカ 南へ マラケシュに一人」という歌詞で、まるで自分がモロッコの地に立っていて、マラケシュ、そしてcorridorへ、迷い込んでいくような身体感覚をおぼえます。
一人でモロッコの路地に迷い、まったくわからないフランス語に涙した25歳の時の自分がそこにいるような気がするのです。
マラケシュのランプ屋
この曲をずっと聞いていて、あっちゃんがいない世界が幻なのか、そもそもあっちゃんが幻だったのか…みたいな気持ちになっていたのでした。